私たちは普段、事業用地や太陽光発電用地などの開発に関わる仕事をしています。
その仕事柄、地主さんのお宅を直接訪ねることがよくあるんですが、これがなかなか面白いんですよ。
何が面白いって、人です。
突然お邪魔するわけですから、「うちはそういう話は結構です」と、玄関先であっさり断られることもあります。まあ、それはそうですよね。頼んでもいないのに、知らない人が土地の話をしに来るわけですから。
ところが、こちらが恐縮してしまうほど親切に接してくださる方もいるんです。
しかも面白いことに、これが地域によって微妙に違う。
同じ愛知県でも尾張の東と西では、なんとなく人の雰囲気が違いますし、三河へ行くとまた違う。もちろん、一人ひとり性格は違いますから、ひとくくりにはできませんが、長年その土地で暮らしてきた人たちには、何か独特の気質というか、風土のようなものがある気がします。
私は昔から人間観察が大好きなので、初めてお会いする方と話をするのが結構楽しみなんですね。
土地を探しに行っているのか、人に会いに行っているのか、時々わからなくなるくらいです。
そんな中で、今でも印象に残っている地主さんがいます。
以前、西尾張でお会いした、陶器の工場を営んでこられた年配の男性です。
10代の頃からお父さんの工場で働き始め、それから50年ほど、ずっと陶器の仕事一筋でやってこられたそうです。
最初はもちろん土地のお話で伺ったんですが、いつの間にか陶器の話になりまして。
原料となる土の選び方から、陶器の歴史、昔の景気の良かった時代の話、会社を経営する苦労、さらには数千万円もする窯を購入したときのことまで、実にいろんな話を聞かせていただきました。
これがもう、めちゃくちゃ面白い。
本で読む経営者の成功談とは、また違うんですよね。
何十年も現場に立って、自分のお金で設備を買って、景気の波にもまれながら商売を続けてきた人の話です。言葉の端々に、その人が積み重ねてきた時間が感じられるんです。
数千万円の窯を買ったなんて、さらっと聞けば景気のいい話ですが、それだけのお金を投じる決断をするときには、相当な覚悟もあったんじゃないでしょうか。
そんなことを考えていると、次から次へと聞きたいことが出てきてしまう。
もう私の仕事なんか、すっかりそっちのけです。
何をしに来たんだと言われそうですが 、その方の人生そのものが面白くて、夢中になって聞いていました。
たぶん、あの工場には、その方の人生の8割くらいが詰まっているんじゃないかと思います。
10代で仕事を始めて、50年ですからね。
楽しいことばかりだったはずはありません。いい時代もあったでしょうし、眠れないほど悩んだ時期だってあったかもしれません。
それでも、ずっと続けてこられた。
ところが、体調を悪くされてしまい、工場を畳むことにしたとおっしゃるんです。
その話を聞いたとき、なんとも言えない気持ちになりました。
50年続けてきた仕事を終えるというのは、いったいどんな気持ちなんでしょうね。
私には、その重さを本当の意味で理解することはできないと思います。
その後、工場の敷地や駐車場、ほかに所有されている空き地などについて、いろいろとお話をさせていただきました。
そこで改めて感じたことがあります。
私たちは土地を扱う仕事ですから、どうしても面積や立地、接道状況、価格、開発の可能性といった条件に目が向きます。
何坪あるのか、どんな建物が建てられるのか、いくらくらいの価値があるのか。
仕事ですから、当然そういったことは大切です。
でも、その土地で何十年も生きてきた方からすれば、まったく違う景色が見えているんでしょうね。
毎朝通った工場の入口。何度も手を動かした作業場。大きな決断をして購入した窯。仕事を終えて、ほっと一息ついた時間。
私たちには単なる工場の敷地に見えても、その方には、そこら中に思い出が残っているのかもしれません。
土地って、そういうものなんだなと思ったんです。
地図の上では、ただの線で囲まれた一区画です。でも、その線の内側に、誰かの人生が丸ごと詰まっていることもある。
考えてみると、すごいことですよね。
だから、土地を売っていただくというのは、単に不動産を取引するというだけの話ではないんだと思います。
もちろん、私たちは商売としてこの仕事をしています。ゼネコンさんや建設会社さんから依頼をいただき、条件に合う土地を探し、地主さんとのお話を進めていく。
ただ、その過程で嬉しくなるような出会いがあるんです。
例えば、「この地域に企業の倉庫を建てたいので、土地を探しています」とお話しすると、
「そういうことなら、地域のためにもなるし、考えてみようかな」
とおっしゃる地主さんがいらっしゃいます。
これが本当に嬉しい。
ご自身の大切な土地ですから、いろいろなお考えがあって当然です。それでも、私たちの話に耳を傾け、地域のことまで考えて協力してくださる。
そんな方に出会うと、こちらも自然と力が入ります。
その土地に新しい倉庫や施設が建ち、企業が活動を始める。そこで働く人がいて、物が動き、地域に新しい仕事が生まれることもあるでしょう。
私たちがやっているのは、そのずっと手前の、小さな仕事です。
でも、その小さな仕事がなければ始まらない計画もあるわけです。
そう考えると、少し大げさかもしれませんが、街づくりや日本の産業の発展に、ほんのちょっとくらいはお手伝いできているのかな、なんて思うことがあります。
そういうところにも、この仕事のやりがいなんだと思います。
そして、あの陶器工場の地主さんのような方にお会いすると、もう一つ忘れてはいけないことを教えられます。
「私たちが扱っているのは土地だけれど、その向こうには必ず人がいる。」
その方が大切に守ってきたものを、今度は別の誰かが使っていく。
だったら、できるだけいい形でつなげたい。
地主さんには、あのとき任せてよかったと思っていただきたいですし、土地を取得する企業様にも、いい場所が見つかったと喜んでいただきたい。
簡単なことではありませんし、いつも思いどおりに進むわけでもありません。でも、だからこそ、きちんと向き合わなければいけない仕事なんだと思っています。
それにしても、この仕事をしていると、本当にいろんな人生に出会います。
同じ土地は二つとありませんが、そこに暮らしてきた人の人生も、また一つとして同じものはありません。
次はどんな方にお会いして、どんなお話が聞けるんでしょうか。
そんなことを楽しみにしながら、これからもあちこちの地域へ足を運んでいきたいと思っています。
土地の売却や活用についてお考えの方、また事業用地をお探しの企業様がいらっしゃいましたら、どうぞお気軽にお声がけください。
土地のお話はもちろんですが、その土地にまつわるお話も、ぜひ聞かせていただけたら嬉しいです。
