マンションを見ていると、なんとなく「高い階のほうが価値がある」という感覚がありますよね。10階より20階、20階より30階。実際、高層階には高層階にしかない魅力がありますし、私自身も高い階から景色を見たときに、素直に「これはいいな」と感じたことがあります。
目の前に大きな建物がなく、遠くまで視界が抜けている。窓の向こうに空が大きく広がっていて、街の中にいるのに少しだけ地上から離れたような感覚がある。写真で見るのとはまた違って、実際にその場所に立ってみると、高層階を好む人の気持ちはよく分かります。
東京都内の有名な超高級マンションでは、東京タワーがきれいに見える部屋が特に人気で、価格が数十億円になることもあります。
もちろん、その価格が東京タワーの眺望だけで決まっているわけではありません。立地もありますし、建物そのもののブランドや設備、広さ、サービスなど、いろいろな価値が重なってその価格になっています。
それでも面白いのは、「窓から東京タワーが見える」ということ自体が、その部屋の魅力のひとつとして扱われていることです。
考えてみれば、少し不思議な話です。
東京タワーは、そのマンションの所有物ではありません。マンションを買ったからといって、東京タワーの一部が自分のものになるわけでもない。それでも、リビングの窓からきれいに見えるというだけで、その部屋を欲しいと思う人がいるわけです。
つまりマンションの場合、私たちは部屋の中だけを見て価値を決めているわけではないんですよね。
朝起きてカーテンを開けたときに見える景色だったり、夜に家へ帰ってきてソファに座ったときの眺めだったり、窓の向こうにどれくらい空が広がっているかだったり。そういうものも、毎日の暮らしの一部になっていきます。
だからといって、「高ければ高いほど価値がある」と単純に考えるのも少し違うように思います。
例えば40階の部屋でも、ちょうど目の前に別の高層ビルがあれば、期待していたほどの開放感がないこともあります。反対に、そこまで高い階でなくても、前に大きな建物がなく、視界が遠くまで抜けていれば、とても気持ちのいい部屋になることがあります。
そう考えると、マンションを見るときに大切なのは、「何階なのか」だけではなく、「その部屋から何が見えるのか」なのかもしれません。
不動産の資料には、価格や面積、築年数、駅からの距離、階数など、たくさんの数字が並んでいます。もちろん、どれも大切な情報です。ただ、実際にその部屋で暮らすことを考えると、数字には表れない部分も意外と大きいんですよね。
窓の前に立ったときに、なんとなく気持ちがいい。
朝、この景色を見ながらコーヒーを飲めたらいいなと思う。
夜、この部屋に帰ってくるのが少し楽しみになる。
そういう感覚は、専有面積にも登記簿にも書かれていません。でも、それを魅力だと感じる人がいる以上、そこにもちゃんと不動産としての価値があります。
高層階のマンションを見る機会があったら、階数や価格だけを見るのではなく、一度ゆっくり窓の外を見てみるのも面白いと思います。
その部屋の価値を決めているものは、案外、部屋の中だけではないのかもしれませんね。
